岐阜ラジオ「ラジオ・ホームドクター」 令和8年7月31日(金)放送分
“糖代謝異常を早めに見つけよう”
今日は、糖尿病、現在はダイアベティスと呼称されますが、その予備軍をいかに早期に発見し、正しい経過観察や治療につなげるか、についてお話します。
皆さんもご存知のように、ダイアベティスは、膵臓から分泌される、インスリンというホルモンの作用不足に基づいて、慢性的に血糖値が高い状態が続くことを主徴とする代謝疾患群です。糖はもとより脂質、蛋白質といった、ほぼすべての代謝系に異常をきたします。原因は多様で、その発症には遺伝的素因や肥満、過食、過度の飲酒、運動不足などの環境因子がともに関与するといわれています。糖代謝異常が続けば、ダイアベティス特有の合併症である、眼の網膜、腎臓、神経といった臓器の機能・形態異常をきたし、進展すれば失明、腎不全による血液透析の導入、壊疽による足の切断などの重大な結果をもたらします。また動脈硬化症を促進し、心筋梗塞や脳卒中、下肢の末梢動脈疾患などの、生命をも脅かす事態を招きます。
ダイアベティスはそんな重大な合併症をきたしうる病気ですが、血糖値が正常より高い、高血糖状態にあってもほとんど症状がないか乏しいため、病気の存在を自覚せず、あるいは自覚してもことの重大さに気付かずに長期間放置されることが多々あります。ダイアベティスを強く疑う人の数は、2023年の厚生労働省の調査で1100万人と、前回の2016年の調査から100万人増加しています。いかに早い段階でダイアベティスとその予備軍を発見し、生活習慣の改善を含む治療に繋げ、合併症のために若くして健康寿命を損なうことのないようにするかが重要な課題となっています。
さて皆さんは健康診断や医療機関で血液検査を受けた際に、血糖値やヘモグロビンA1c検査を受けることがあると思います。今日は特にダイアベティスの予備軍にしぼってお話しますが、健康診断では、おそらく皆さんは前日21時以降から物を食べないで、朝食抜きで検査を受けることが多いと思います。このタイミングで測定する血糖値を「空腹時血糖」と称しますが、一般に100mg/dL未満、すなわち2桁が正常です。100以上110未満は「正常高値」、110以上126未満は「空腹時血糖異常」、126以上は「糖尿病型」と判定します。空腹時血糖が100以上の方は将来ダイアベティスに進展する危険があると考えられています。
HbA1cは、高血糖の持続により蛋白である血色素(ヘモグロビン)とブドウ糖が結合することによって生じる糖化蛋白の一つで、概ね遡ってヘモグロビンの寿命である4か月間の平均血糖値を表します。ダイアベティスの診断基準では、6.5%以上は「糖尿病型」と判定されますが、HbA1c 6.0%が空腹時血糖110mg/dL、HbA1c 5.6%が空腹時血糖100mg/dLに相当するといわれています。特にHbA1c 6.0から6.4%の場合には積極的にダイアベティスの存在を疑って経口ブドウ糖負荷試験を考慮すべきであり、5.6から5.9%では、ダイアベティスの家族歴の有無や肥満あるいは極端のやせ型か否かなどの他のリスクも勘案して経口ブドウ糖負荷試験や適切な経過観察を行うべきとされています。
一般にダイアベティスの進展経過において、まず食後の血糖値が上昇し、続いて空腹時血糖値が上昇するとされ、HbA1cは、食前血糖が高くなく、食後のみスパイク状に急峻に血糖値が上昇する病態を反映しにくいことがわかっています。食後の血糖値は正常では140mg/dLを超えることはありません。あえて食後に、一般的には朝食後血糖でしょうか、血糖値を測定することで糖代謝異常の可能性を早期にスクリーニングできる可能性があります。食後血糖値は概ね食後1時間から1.5時間で最も高くなるため、そのタイミングで血糖値を測定することが重要です。食後血糖が200mg/dLを超える方はダイアベティスの可能性を強く疑いますので、経口ブドウ糖負荷試験による精密検査を推奨します。食後血糖が140以上200未満の方では、数ヶ月後に食後血糖の再評価を行うか、先ほどHbA1cのところでお話ししましたように明確なダイアベティスの家族歴のある方、高度な肥満体型ややせ型の方ではやはり経口ブドウ糖負荷試験を考慮します。ダイアベティスの家族歴のある方は、元々糖負荷後初期のインスリン分泌反応低下が存在することがよくみられます。高度な肥満の方は、インスリン分泌は十分かむしろ過剰ですが、その作用が低下しているために食後血糖上昇をきたす可能性があります。最近では若いやせ型の女性において、運動を伴わない過度な食事制限により、インスリン分泌・作用とも障害され、糖代謝異常をきたしうる病態が注目されています。食後血糖値が高い方は、ダイアベティスのリスクのみならず、動脈硬化性疾患のリスクも高いことがわかっています。
以上を踏まえ、血糖値、特に食後血糖値、HbA1cの少しの異常がみられた場合、ダイアベティスやその予備軍を疑うきっかけやダイアベティスの早期発見につながる可能性がありますので、かかりつけの医師、薬剤師、もし可能なら糖尿病療養指導士や糖尿病専門医に相談していただけるといいでしょう。

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